ステップダウン法っぽい手順の再考 また本題を外れます。 以前「ステップダウン法っぽい手順」と称して以下の手順を紹介しました。 プラセボ群を含む全ての用量群における応答の単調増加性を検定する。 1で単調増加性が確認できた場合に限り,高用量から順にステップダウン法でプラセボ群と対比較し,有意差が認められなくなった時点で検定を止める。 この手順を採用した時にも開発チームから指摘されていた点ですが,素朴に 「単調増加性をそこまで仮定していいの?」 「ステップダウン法で最初に有意差なかったら終わりでしょ?でも次の用量でもしプラセボ群と差があっても比較できないんだよね?」 という疑問が残ります。 当時の私は 「いやいや,本当に効く薬なら単調増加性は成り立つはずでしょ?プラセボ群も含めてるし。」 と言い張っていました。 今の視点で言えば,私の主張には以下の問題があります。 ある種の薬剤においては,ある用量以上で平均反応が減少に転じるDownturn型の用量反応関係を示すことがある。 そうでなくても,もし選んだ用量が高すぎもしくは低すぎであれば,実薬群の用量反応関係はフラットなものに近くなり,単調増加的にならない可能性がある。 担当していた件の薬剤の性質上,開発チームはきっと効果に疑問を持っていたのでしょう。それでも私の主張を通してくれたチームの方々にはただただ感謝です。 改善案 第2相試験であることを考慮すれば,当時のチームの指摘に対応した改善手順は以下のようになるでしょう。 プラセボ群とそれ以外の全ての用量を併合した実薬群の応答を2群比較の形で行う。 1で有意差が確認できた場合に限り,プラセボ群と各用量群をHolms法で対比較する。 要は「単調増加性」の確認を直接行わないという方針への変更です。Holms法はBonferroni法の変法の1つで,個々の比較に対するp値を小さい順に並べ,ここでは比較の数は4なので,最も小さいp値に対しては4倍,次に小さいp値に対しては3倍,次は2倍,最も大きいp値はその値自信を調整p値として検定するものです。 こう書くと目新しさはないのですが,これを「有意水準の分配?」という見方で説明すると以下のようになります。 プラセボ群と実薬の併合群を片側2.5%の有意水準で比較する。 ...