「対比」の評価の拡張:最大対比法
対比較によるMEDの「検定」の問題点が指摘されていた1990年代中~後半、最大対比法という方法論が提唱され始めました。対比の概念自体は当時も既存のものでしたが,複数の対比を同時に検討するのが新しい点。それに伴う多重性への対応が問題でしたが,データのリサンプリングにより同時分布をシミュレートするという,最も単純な,しかしコンピュータの性能を最大限活かしたアプローチで見事解決。背景にはSASのMULTTESTプロシジャのリリースがあったようですが,当時私はすごく感動を覚えていたように思います。
最大対比法の特徴を改めて考えると,
- Dunnett法等の多重比較手法も網羅している
- 検定結果は「用量間で応答分布に差がない」という帰無仮説を棄却できるかどうかの判断根拠
- あとは当てはまりの良さそうな対比を選び,それに基づき臨床用量候補を選び出すだけ
Rによる最大対比法
今回の解析は全てRを用いたものです。Rでもリサンプリング法を実装するmulttestパッケージがかつては存在しましたが,今はリタイアしているらしい。今はmultcompという別のパッケージで実装するよりなさそうですが,このパッケージではリサンプリングではなく理論的な多変量分布を用いて複数対比の評価を行います。biomデータの解析結果
結果は以下の通り。比較 | 対比 | 調整P値 | |
0.05でプラトー | (-4,1,1,1,1) | 0.017 | |
0.2でプラトー | (-7,-2,3,3,3) | 0.0019 | |
0.6でプラトー | (-9,-4,1,6,6) | 0.0013 | |
線形 | (-2,-1,0,1,2) | 0.0014 | |
1で降下 | (-8,-3,2,7,2) | 0.0022 |
対比の設定については議論の余地があるものの,この結果から分かることは,
- P値は全て2.5%より小さいので,有意水準を片側2.5%とすれば,プラセボに比して実薬が有効であろうことは推察できる。
- もっともP値が小さいのは「0.6でプラトー」なので,この結果から選ぶ臨床用量候補としては0.6と1ということになる
- ただし「線形」対比もP値としては近いので,用量1を選ぶかどうかは別途検討が必要
その頃私は:就職そして初の担当割当
1996年に,割と小さい内資系製薬企業Yに就職しました。もう19年前なんですね~。1年目は医薬統計や社内システムの研修に明け暮れ,2年目あたりから治験の統計解析担当になったと記憶しています。
今もそうかもしれませんが,当時は統計解析担当は試験の計画・解析の計画と報告を全てカバーしていました。用量の悪さは今以上だったと思いますが,とにかく色々やったという感触だけは残っています。このときの経験は今の私の土台ですね。それと,そんな私の好き放題を許してくれた先輩諸氏にはただただ感謝です。
話は前後しますが,入社2年目に生物統計の通年研修に参加したのですが,それに私の妻も参加していたらしいです。「らしい」という位なので,当時話したりした記憶は少ないです。何度かランチを一緒にしたでしょうか?
そうこうしているうちに会社は激変します。「ある薬剤の分野」で有名だった内資系製薬企業Mと合併,大阪に人生初の転勤です。この合併はまさに「火中の栗を拾う」という表現がぴったりでした。私も先輩や上司から断片的にこの辺りの事情は聴いていましたが,上層部の方々はかなり大変な思いをしていたようです。色々合併に思惑はあったようですが,後々その思惑は悉く裏切られることになります。
ただし,私個人としては関西という新たな土地で生活できたこと,また合併で色々な人・仕事と巡り合うことができたのはよい経験だったと思います。企業でのDiversity(多様性)の重要性が叫ばれていますが,まったく同意です。
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