ある担当業務での経験
最大対比法がかなり浸透していた2000年前後,私はあるプラセボ対照用量探索試験を担当しました。それは疼痛スコア改善をエンドポイントにする試験で,たしか50点満点くらいの主観評価だったと思います。今の私なら遠慮せず最大対比法を適用していたはずですし,おそらく私以外の人が担当していたらやっぱり最大対比法を適用するでしょう。それは今の勤め先の外資系製薬企業での対応そのものです。
しかし,当時の私は「50点満点正規性は仮定できない,順位和検定ベースで解析を」と固く考えてしまったんですね~。
しかし,最大対比法は,そしてMCP-Modも順位和検定には対応していません。こまった話ですが,「順位和検定は用量探索試験の主要解析で使うな」ということですかね。上記のようなデータの解析を今風に考えれば,「適切な閾値で二値化して最大対比法またはMCP-Mod」ということになりそうです。その「適切さ」が難しいのですが。
ステップダウン法っぽい手法?
そんな了見のない当時の私はどうしたか?当時は多重比較の流行が単純な調整手法からステップダウン的手法に移りつつある時期だったこともあり,また順位データでの多重比較で第1種の過誤率を制御できるのかどうか確信できなかったということもあったので,DR推定問題はさておいて,仮説族を以下のように設定しました。
- H0all: 用量間に有効性に関する単調増加な用量反応関係はなく,有効性は用量間で均一
- H01:最高用量とプラセボ群の有効性は等しい
- H02:次に高い用量とプラセボ群の有効性は等しい
- H03:次に高い用量と・・・
- ・・・
- 全用量+プラセボ群における傾向性検定を適用する。
- 1で所定の有意水準を達成できなければStop,達成できれば最高用量群とプラセボ群を所定の有意水準で比較する
- 2で有意水準を達成できなければStop,達成できれば次に高い用量群とプラセボ群を所定の有意水準で比較する
- (以下同様)
- プラセボ群との対比較は重要,それもできるだけ検出力の高い手法で。
- 単調増加性を仮定すれば,ステップダウン法がよいだろう。これなら順位和検定も適用可能だし。
- その前提として,単調増加性の確認は必要なので,傾向性検定を適用しよう。
企業の統計担当者として今の目で見ると色々問題はありますが,やっぱり若いというのはいいですね。
biomデータに同じ手順を適用すると…
片側2.5%の有意水準での結果は以下の通り:- Jonckheere検定(傾向性検定):p=0.0002=>単調増加性あり
- 0 vs. 1: p=0.0034=>有意差あり
- 0 vs. 0..6: p=0.0077=>有意差あり
- 0 vs. 0.2: p=0.0098=>有意差あり
- 0 vs. 0.05: p=0.2068=>有意差なし
その頃私は:初の海外出張,そして東京に転勤
冒頭の担当業務を始めた2000年=ミレニアム(死語)前後は色々ありました。まず初の海外出張。場所はアメリカのコロラド州デンバー,目的は学会参加でしたが,今ならなかなか行かせてもらえないでしょう。「昔はよかった」ということですね。
この学会で見たもの聞いたものは,当時の私にとっては衝撃でした。明確な考えではなかったけど,「変化について行かないと」とぼんやりと感じたように思います。
次に更なる合併と東京転勤。2001年11月,Mという財閥系の製薬企業との合併に伴い,再び東京勤務に。このMという会社自体,2社が合併してできたので,都合2+2=4社の所帯になったということですね。
当時は内資系製薬企業同士の合併が続いていましたね~。「小さい会社じゃ世界で太刀打ちできない」的発想だったのかもしれませんが,世界で戦うには規模ではなくビジネスの種を持っているかどうかが重要だと思います。
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